素人のグールド礼賛

グールドのバッハはレコードも、CDも何枚か持っていたが、彼の弾くモーツァルトのピアノ・ソナタには手が伸びなかった。先入観があって、モーツァルトのイメージを壊したくないし、グールドを嫌いになりたくない、というジレンマがあった。

吉田秀和先生がグールドのモーツァルトは「荘厳である」と、語っている場面をyoutubeでみて、「これはやっぱり聴かねば」と、図書館で借りてきた。

まずCD1曲目はソナタ8番。この曲はモーツァルトにとって辛い体験が続いたころに書かれた曲で、第1楽章は胸が塞がるような、暗い、悲劇的な音楽だ。グールドはこれら感情を振り払うように、速いリズムを刻む。第2楽章は悲しみを鎮めるような優しく穏やかな曲調だが、ここもグールドのテンポで進む。

グールドの弾くモーツァルトは12番がとびきりすばらしい、と思った。第1楽章、第2楽章ともグールドにしては、オーソドックスに弾いているようだが、こんなロマンティックな演奏は他の演奏家ではあまり聴けないのではないか、と素人ながら思う。弾むような気持で心が躍る第1楽章、透き通るような美しさの第2楽章にはため息がでる。ダイナミックな第3楽章で、強烈なインパクトを残し終わる。

モーツァルトの初期の作品以外はすべて嫌いだ、駄作だ、みたいなことを発言している、グールドのインタビュー記事を読んだことがある。けれど、やっぱりこの人はモーツァルトを愛していたに違いない。天才同士で対話しあっている、そう思える、グールドならではの演奏。聴いて良かった。
モーツァルト:ピアノソナタ集
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
2004-11-17
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