韓国ドラマ『私の期限は49日』感想

今日は韓国ドラマの感想です。長いです。関心のない方はスル―を推奨いたします。

こんな仏教説話を聞いたことがある。幼い子供を亡くした母親がお釈迦様を訪ねて懇願した。「死んだ子供を生き返らせてください」。「わかった。では、死んだ子供のいない家から、けしの花を持ってきなさい」。お釈迦様はそうお答えになった。母親は村中を探し回ったが、死んだ子のいない家などはなく、生老病死ばかりはどうにもならないことを悟った。

この説話もモチーフになったのではないか、と想像させられた、韓国ドラマ『私の期限は49日』が月曜に放送終了。「49日」というタイトルからしても、初回冒頭で生まれたての子どもから老若男女の姿が描かれるところなどみても、かなり仏教思想に影響されている印象があった。先日も少し書いたように、仏教で言うところの「四苦八苦」を見事に現代のストーリーとして描いたドラマだった。

以下レビュー。長くてまとまりがないのですが、こういうことを書くのもよいリハビリになるのでUPします(言い訳です)。

ハン・ガンは高校の同級生ジヒョンが好きなのだが、その言動・行動は全く正反対で、ジヒョンに冷たい態度を取る。ジヒョンは誰にでも優しい屈託のない無邪気な女の子で、ハン・ガンの思いに気づかない。ハン・ガンは両親の離婚で、父のいるアメリカへと、ジヒョンへの思いを残し、高校の中途で旅立つ。数年後若手建築家のホープとしてハン・ガンは韓国に戻ってくる。彼には帰国したら探したい女性がいた。それはもちろん高校時代の片思いの相手ジヒョンなのだが、彼女はなんとハン・ガンのアメリカ時代の先輩と婚約していた。彼の恋はこれで終わるところだったのだが、事態は急展開。ジヒョンが結婚式の前日に交通事故に遭い、脳死状態となってしまうのである。

ここから物語はあの世とこの世が交差する不思議なストーリーを展開する。ジヒョンはあの世のスケジュールでは事故で死ぬ予定ではなかった。だから、49日の間に心からジヒョンを愛する人(親族は除く)がジヒョンのために流す涙を3粒集められたら蘇生できる、とジヒョンはあの世からやって来た使者に告げられる。脳死状態のからだから、ジヒョンの魂は抜け出て、この世を移動することができる。しかし、ジヒョンの姿はこの世の人間には見えない。他人のからだを借りねば、この世で涙を集められない。そこで、イギョンという、この世に絶望して影のように生きている女性に憑依して、涙を集めることになる。

イギョンのからだを借りたジヒョンはハン・ガンの経営するワイン・バーで働く。3人くらいは泣いてくれるだろう、と思っていたジヒョンなのだが、涙は容易に集まらない。「私は誰からも愛されていなかったのか」。涙集めに苦心するうちジヒョンは驚愕の事実を知る。婚約者のカン・ミノがジヒョンと結婚するのはジヒョン父の会社(大企業)を乗っ取るのが目的で、それを共謀していたのはジヒョンの大親友であるインジョンであり、2人はそもそも恋人同士だったのだ。2人の裏切りを知ったジヒョンは悩み苦しむ。そして、父親の会社を守るために立ちあがり、また涙集めにも悪戦苦闘する。さらに追い打ちをかけるようにジヒョンの父親が脳腫瘍の宣告を受け、次々と試練がジヒョン(の魂)を襲うのである。

そんななかジヒョンを愛するハン・ガンはイギョンが実はジヒョンであることを見抜く。そして彼女が生き返るために、ジヒョン父の会社乗っ取りを阻止するために、イギョンの姿を借りたジヒョンを陰になり日向になり助ける。ハン・ガンが「イギョンは実はジヒョン」と気づいたこと、自分を愛してくれていることを知ったジヒョンなのだが、名乗り出ることもできず、お互い思いは募るばかり。そうこうするうちに、49日のタイムリミット寸前でジヒョンはようやく涙3粒を集め(1粒目はもちろんハン・ガン)、意識が戻る(魂がからだに帰る)。ところが、それもつかの間。ジヒョンは別の病気で意識回復から5日後に死ぬ運命なのだ、とあの世の使者に伝えられる。ハン・ガンへの思いも告げず、彼女はあの世に旅立つ。ジヒョンの死後彼女にからだを貸していたイギョンは生き別れたジヒョンの実の姉であったことが判明する。

はー、20話を1200字ちょっとでまとめたのにはさすがに無理がある。わかりにくい点ご容赦ください。

さて、ジヒョンの49日とは何だったのか。結局死んでしまう運命ならば、なぜ49日が必要だったのか、と問われ、ジヒョンは言う。この49日がなかったら、私はうわべの人生しか知らなかった、と。

うわべではない人生、これこそがまさしく「四苦八苦」であった、と私は思うのだ。生老病死、愛別離苦(愛する者と生別・死別する苦しみ)、怨憎会苦(恨み憎む者に会う苦しみ)、求不得苦(求めるものの得られない苦しみ)、五陰盛苦(色、受、想、行、識の五陰からくる心身の苦しみ)を身を持って知る49日だった、と思う。お嬢さん育ちで何の苦労も人を疑うことも知らなかった女性が、うわべではない、人生のほんとうのところを知る旅。それが「49日」だったのだ。

最終回はカット部分が多く、ジヒョンを失ったハン・ガンの嘆きが描き切れていなかったのが残念だった(youtubeで確認すると、ノーカット版ではこの部分がもっと丁寧に描かれているようだ)。しかし、この人生の四苦八苦(人間のほんとうの苦しみ、悲しさ)を教訓でもなく、抹香臭くもなく、コメディの要素を入れて、描けるとは。私は驚嘆した。ノーカットでの再放送望む。

私がジヒョンのような状況になったら、涙3粒集められそうにない。その涙とそれを集める過程は、結局その人のそれまでの生き方が問われる、ということなのだろうから。