一度は書いておきたかったこと。

一度は書いておきたかったこと。それはストーカー被害だ。これがストーカーにあたるだろうと専門のカウンセラーに教えてもらったのは実はつい1週間前。ことがおこったのは4年前になるだろうか。母が亡くなった後のことだ。

私はそれがとても「気持ち悪い」体験であることは自覚していたが、それを出るとこにでれば「ストーカーと認定されて」「おそらく少し見守りしましょうか」ということになったでしょうね、と言われる事態とは思っていなかった。

というのはついこの間まで輪郭がぼやけていたからだ。ここがたぶんひとつのポイントだろうと思う。

母が亡くなってあるカフェで毎日のように夕食を食べるようになった。とても一人でご飯を作って食べる気になれなかったからだ。そこである男性としょっちゅう顔を合わせるようになった。

そのうち世間話をその店のオーナー交えて話すようにはなったが、だから相席するとか、そういうことはなかった。私がオーナーに話す内容をその男が聴いていたのだ。小さい店だから仕方ないのだが。

あるとき突然話しかけられた。「〇×さんは(私の名前)下の名前は▽△さんですか?」と聴かれた。「○○大学ですよね」とも言う。驚いた。「なんでご存知ですか」と聴くと「やっぱり、そうだ」「ネットで調べたらでてきました。ネットで○×と名前を売って、××学(私の専攻した学問)といれたらでてきましたよ、名前が」と言うのだ。

私が書いた論文のタイトルまで言う。その時点で気持ち悪いとは思ったが、悪意はないだろう、と思っていた。

すると、それからその店で会うたびに私の専門とするような領域についてあれこれ質問をしてくるようになった。回を重ねるうちにこちらに「面倒だなあ」という気持ちが湧いてきた。でもそれはまだ序の口だった。

私はそのころ住んでいる住宅の修繕工事があって、別のマンションに2か月ほど仮住まいすることになった。それが「どこのマンションか」とある人にその店で尋ねられてtうっかり答えてしまった。その男性がそれを聴いていたらしいのだ。

ある日久しぶりにそのお店に行ったら、その男性に「この頃来ないから、マンションまで見に行ったのですよ」と言われて、背筋がぞっとした。

その次にお店でであったときは、私が通う英会話教室まで来たという。「僕も習おうかと思って行ってみた。男性の先生と話した」という。なんかの冗談か、からかわれているのか、いやがらせか、と思った。

マンションに来たり、英会話にも来たということをわざわざ告げる。怖いと思った。お店で出会うたびしつこく私に話しかけてくるのも閉口していた。母が亡くなった直後の隙間にはいりこんでくるような、侵入的な態度もいやだった。

お店のオーナーに事情を話して「私はしばらく行かない」と伝え、私は1年近くその店にはまったく行かなかった。行かなくなっても、お店は自宅近くだ。いつどこで会ってしまうか。はたまた家まで来るんじゃないかと思うようになっていた。この恐怖を誰にも話せなかった。

話せなかった大きな理由は、50代の病気の女がストーカーされるということを自分も認識していなかったし、他者はなおさら「気のせいだ」と思うだろう。そう感じていたからだ。

あのときなぜ専門家に話すという選択肢が思い浮かばなかったか。自分でも疑問だが、当事者とはそういうものなのかもしれない。では、なぜ、いまになって「これがストーカーだったのではないか」と思うようになったのか。また思い出したのか。

それはこの間ちらっと記事に書いたけど、あるお店でその当時よくそのカフェ出会った女性と偶然会ったのが引き金だ。彼女に「引っ越したんじゃなかったのか」と聴かれて、それだけで、からだが一瞬凍り付いたのだ。そしてあの男性の顔がぱっと頭に浮かんだのだ。

そう私に尋ねた女性とその男性がよく話していた光景も浮かんだ。この女性とそんな話をしたことないのに「なぜ?」まして「じゃあ、まだあそこにいるんですか」と言われて、私の家など知らないはずのこの女性がどうして私の家を知っているんだ、と疑念がわき、当時のあの嫌な出来事がフラッシュバックしたのだ。

それから数日後私は専門相談に電話した。4年前の一連の出来事と、その女性がそう話しかけてきたときに、一瞬頭が固まり凍り付いたことを話したら、私のその反応は「ごく自然な反応だ」と相談員は丁寧に説明してくれた。

そして冒頭に書いた、たとえば警察のストーカー対策課にそのときその状況を話したら「少し見守りしましょうか」という話になるだろうという話があった。

私は当時その男性の一連の行動にとても嫌な気持ちになったけど、その嫌な気持ちにラベルをつけたり、明確に言語化することができなかったのだ。輪郭がぼやけていて。

4年たって、あれが「ストーカー」という範疇に入るかもしれないこと、そういう体験をしたら誰でも恐怖を覚えること、それも遅延して恐怖を感じることもあるということを教えてもらえて(「ストーカー」と正式に認定できるのは警察だそうだ)、ひとつ整理ができてよかった。

専門相談の電話を切るとき、相談員さんが言った。「トラウマということについて書いてある本を少し読んでもいいかもしれませんね」と。