物語は中盤から後半へ~『マイ・ヒーリング・ラブ』の勝手な中間総括。

4月20日からひとり騒いでいる(ツイッターでも盛り上がっているけど、わたしはそれをしていない)、韓国ドラマ『マイ・ヒーリング・ラブ』も残すところあと13回となってしまった。地上波では全44話なのにDVDは52話ある。ということは細切れにして8話分カットしているのだ。

物語がちょうど中盤から終盤へと入るところなので、ここで(あくまで)個人の趣味と志向と(要するに偏見)があいまった中間総括をしてみたい。なお、ここから先は韓流に関心ない方々はスルーを推奨します。おひとりおひとりの貴重な時間がもったいないので。

さて、このドラマ、どういう物語かというと、説明が面倒なほど人間関係が複雑である。主人公はソ・ユジンさん演じるチユ(「治癒」の意味。この名前がドラマのタイトルであり、物語のミソ)。5歳の時に街をさ迷っているところを、育ての母となる女性に救われた(この母がナイスな懐深い女性)。チユは現在38歳。3歳下の夫(アイデンティティ・ステータスの「早期完了」タイプかと)、舅姑と夫の弟(弁護士で野心家、過去に付き合っていた女性に子どもができても結婚も認知もしないで偉そうにしている)が家族。養母の家には家族として育った弟(とっても好青年)、妹(母親の美容院を抵当に入れてサギ男に貢いで親を身ぐるみはがした)がいる。

チユは働き者で、何をやらせても仕事ができる。昼は義弟が弁護士をしている法律事務所の事務長をしているが、夜は友人の経営するコーヒーショップを手伝い、清掃員、ガソリンスタンドの給油までこなし、早朝から夜遅くまで働き続けている。夫は表向きは弁護士目指し8浪中だが、実は弁護士になる気はさらさらなくハンバーガーの移動販売をしている。

チユがこれだけ働くのは、夫の家族から別居したいがため。とにかくイボクという姑(彼女が異常に面白い。この役での助演女優賞受賞は納得)のいびりがひどい。チユが8年経っても子どもが産めないことや孤児だったことをあげつらい、ことごとくつらくあたる。それでもチユは甲斐甲斐しく家族に献身する。ちなみに、これ2018年から2019年に放送された現代劇です。

で、ここから急ぎ端折っていくが、夫の弟が野心家の弁護士であるうえに、ある女性に子どもが生まれ認知を迫られているのに、ハンスグループという大財閥の娘と結婚しようと母親と魂胆(共謀?)し、高級住宅街にあるハンスグループ会長一家の隣に引っ越すことから物語が動き出す。

実はチユはこのハンスグループの会長の唯一の血のつながった孫娘。会長には家族として、会長の実の娘(チユオンマ)の婿と、彼が妻の死後再婚した妻とその連れ子とその娘(この子がまた愛らしい)、婿と再婚した妻の間に生まれた娘がいるが、誰一人会長との血縁関係はない。チユオンマはチユを産んでまもなく
亡くなっていて、遺された彼女の母(チユ祖母)と夫(チユ実父)を癒す存在がその生後間もない赤ん坊だったため、その子をチユ=治癒と名付けた。

チユは会長である祖母と遊園地に行き途中ではぐれてしまい、33年行方を知らないで過ごしてきた。真相は祖母が見失ったのではなく、その婿の後妻が5歳の子どもを市場に置いてきて捨てたのである。30年前の「棄児」って福祉でどうにかならなかったのかとか、そういうことはここでは考えないことにする。

さて、隣に33年探し続けた孫が引っ越してきたことなど想像もしない両家。うまくいけば財閥家に婿に入ろうと考えているチユ義弟とのトラブルやあれやこれやで、財閥一家は突然越してきた家族によい印象を持たない。ところが、そのハンスグループの常務であるところのチユ実父の後妻の連れ子であるジンユ(ヨン・ジョンフンが演じていて、とてもとても素敵)が、ひょんなことから、隣の家の嫁であるそのチユが大学時代に片思いして告白直前に突然消えた女性であることに気づく。

ということは、つまり彼の初恋相手が「探していた血のつながらい妹」なのであるが、そんなことはジンユ氏は想像だにしないことで、だけど、どんだけややこしい人間関係なんだっていう話。

財閥一家が33年間探し続けていたチユが、隣に引っ越してきた家の嫁であることをいち早く察知したのは、チユを棄児にしたチユ実父の今の妻(つまりジンユオンマ)。従って、これが発覚してしまったら、自分と息子と娘の地位が脅かされると当然思い、ありとあらゆる手を使い、発覚を阻止するための数々の妨害を始める。30年この家にひたすら使えてきた努力と人生をここで捨ててなるものかという構えだから、採取したDNAを他人のものとすり替えたり、なんだり、ありとあらゆる悪事をし尽くす(殺人だけはしてない)。

しかし、ある出来事がきっかけになり、チユがチユであることを財閥一家の長であるチユの実の祖母が気づく。チユも探していた家族がこの家ではないかと疑い始めていたタイミングだった。ハンスグループ社長とのDNA鑑定で父子と判定され、チユはハンスグループの唯一の血族で、名誉会長の孫娘としてめでたく迎えられるが、この先がまた苦難の連続。

チユが行方不明になった経緯に不可解な点が続々でてくる。それを隠そうとしているチユ実父の現在の妻(つまりチユを棄てた張本人)が発覚阻止のため数々の裏工作をする、チユの夫が浮気する、ジンユの元妻が離婚訴訟無効を訴えるなどの負の物語の片方で、ジンユの妹(つまりチユ実父と現在の妻との間にできた娘)とチユの養母の息子(つまりチユの血のつながらない弟)との若いほっこりする恋愛要素も盛り込まれて(なんでこんなに近いところで恋愛するかなというのもあるが)韓国ドラマならではのホームドラマ的展開もある。

前半はテーマは重いながらも、主人公チユの明るさ・けなげさ、生き生きとしたヴァイタリティと、ジンユの麗しく優しい笑顔と誠実さ、そしてこの二人の掛け合いの妙が魅力。だが、チユを実の祖母(韓国屈指の財閥の長)が見失ったのではなく、どうも誰かが介在してことが起きたらしいとわかりはじめるところから、物語のトーンが一挙に変わる。

中盤から後半までをまとめると(なんで、まとめ?)、チユが捨て子になった不可解な出来事の解明がサスペンス仕立ての物語として進行する軸と、チユ実父の今の妻の連れ子であるところのハンスグループ常務‐ハンサムで仕事ができてしかも明るくて温かい心の持ち主‐ジンユのチユへの思いが再燃するラブロマンスの軸とが展開しはじめる。ジンユはチユと再会してから「守護神」のように彼女の苦境の場に現れては救い守ってきた。けれど、チユには夫がいる。ここまでは古い友達としてあくまで接してきた。

ところが、チユが血はつながっていないが「妹」であることが判明し、家族として近しくなり、会う回数が増えるにしたがって、また彼の恋心が動き始める。彼がそこに葛藤し苦しみ理性で必死にコントロールしようとする場面が素敵、じゃなくて、切ないのだった。

そもそもチユさんにしてもジンユさんにしても、切ない悲劇的運命のもとに生まれた同士みたいなもの。チユは上記で述べた通りの生い立ちだし、ジンユは父が誰かが描かれていないが、どうも貧困にあえぐシングルマザーのもとに生まれて、慈悲深いチユ実父がこの母子を救うべく再婚したようなのである。そういう背景が、チユを棄児にするというジンユ母の悪事の伏線となる。

チユとジンユの恋愛は悲劇的展開をするしかないのだが、さて、どうなるかが、後半から最終回までのみどころのひとつ。

ここまでみてきて、なんといっても魅力はくどいけど主演二人。さすが二人それぞれ主演としてリーディングロールを受賞しただけある演技。よく韓国ドラマの記事を翻訳で読むと、たとえば「ソ・ユジンとヨン・ジョンフンが息をあわせた」とか「呼吸をあわせた」という表現をみる。これ独特だと思う。日本で共演者が「息の合った演技をした」とは聴くが、共演したそのこと自体を「息(または呼吸)を合わせた」とはあまり聞かない。

でも、この二人をみて、「息(呼吸)を合わせる」という表現がなるほどこういうことなんだな、とわかった気がする。ただ一緒に焼き肉食べているだけだったり、買い物しているだけだったりな場面なのに、二人は演技として意識して息を合わせているのではなく、人として相性がいいんだな、という感じがする。

とりわけヨン・ジョンフンが、前にもちらっと書いたけど、あまりに自然なので演技ではなくて、全部アドリブかと思うし、ささいな目の動きや表情で、十分その時のジンユの心境が表現される。それでこっちがジンユの思いに自分を重ねて、切なくなったりしちゃうのである。

脇がまたぞろぞろと韓流ドラマを何度かみてきたものには、おなじみの人ばかりが揃い、達者な人がそろっている。まったく飽きないまま、だるいところもひとつもないまま、後半まで連れてきてもらった。

テレ東さま、『きのう何食べた?』でも感謝をささげましたが、この韓流ドラマを地上波で放送してくれて「コマオー」です。

<追記>
「呼吸をあわせる」「息をあわせる」というのは、単に「共演する」という意味のようなのだが、なんとも韓国語がわからないので、いまいちニュアンスが解ってない部分あり。でもまあ、「共演する」と書けばいいところを、「呼吸(息)をあわせる」と書いているのがほとんどなので、これはこれで独特であることには違いないだろう。